Stay Gold!

羽生結弦くんの応援ブログです。ここで記載されている内容はあくまでも私の個人的な意見であり、正当性を評価したものではありません。どのように受け取るかはそれぞれがご判断ください。

ファントムの涙 1

f:id:t_seria:20140613174744j:plain

11月が終わった。
私にとっても、怒涛のような1ヶ月だったなぁというのがしっくり来る。。

この1ヶ月、本当に彼の心配ばかりしていた気がする。
フィンランディア杯の欠場を聞いてから、その体調を心配し、中国杯の出来事でさらに心配ごとは増えて、今も続いている。

ゆづがNHK杯を諦めないだろうことは想定の範囲内だった。
上海で、あの状況で滑り切ったことを考えれば、この試合に出ずにファイナルを諦めることはないだろうと想像がついた。
その過程が私が思ったよりも過酷だったことは後で彼の発言から分かることになるのだけれど。

報道では構成を落として臨む、と連呼されたけど、極端に落としたわけではない。
ソチオリンピックの時と変わらない難易度。
勝負するつもりだっとことが分かる。
いくら彼がスーパーマンでも、この試合で勝つことは難しいだろうと思ったし、
勝ち抜くのは無良くんだと思っていた。
今年の彼は去年までの彼とは違っていたから。

ショートの6練に出てきたゆづを見て私は切ない気持ちになった。
ここまで来るのも本当に大変だっただろう。
滑っていることが奇跡だから、それでいいと思えたら幸せだったろう。
その佇まいに「羽生結弦らしさ」は感じられなかった。

ショートに選んだ「バラード1番」は残酷なプログラムなのかもしれない。
パリの散歩道のように勢いで彼を連れて行ってはくれない。
淡々と技術を積み重ねて、音を取りながら、表現していくことで味が出るプログラムだから。
会場の空気も盛り上げにくい音楽構成でもあるので、ジャンプの失敗で途切れてしまうと、
なかなか自分を上げていくのが難しいのだろう、と思う。
本来の彼だったら、質のいいジャンプと、滑らかなスケーティング、そして、音感の良さと、独特のオーラで滑りきるのだろう。
この日は珍しく、ゆづが滑っている時に氷をガリガリと削るブレードの音が聞こえて驚いた。

2012年のロミオのころの彼のスケーティングはいま見ると、氷をガリガリと削っていて、
滑っているというよりは、勢いで滑らせようとしているという感じだった。
オーサーコーチのところに行ってから、このスケーティングは劇的に改善されたと思う。
風を切って、トップスピードで滑っても、音がしないのが最近のゆづだった。

そうとう無理をしているのかもしれない、と感じた私は無意識のうちに手を合わせて祈っていた。
「どうか、無事にすべり切れますように」と。

結果はクワドの失敗と、コンビネーションが跳びきれず、5位。
回りきって転ぶことは簡単なことじゃなかったんだね、ゆづ。

クワドの軌道は小さめだったし、入りも回転も遅かった気がした。
あれではゆづが普段、跳んでいる綺麗な4Tは跳べないよ。
跳ぶ前から失敗することがわかっていたジャンプだった。
それでもスピンとステップでなんとか点を積み上げようとしているのはよく分かった。
もちろん、彼の武器はジャンプだけじゃない。
トータルパッケージの強さ。
そこからジャンプが抜け落ちても、取るべきところはもぎ取ることができる彼の強さを認識しつつも本人が納得していないことはキスクラの表情を見ても明らかだった。

頑張ったね、と見ているの多くは思っただろう。
それだけでいいと思ったファンも多かったかもしれない。
でも、たぶん、彼は勝算があって出てきたはず。
もちろん勝つつもりで。
だとしたら、この成績は受け入れがたいものに違いない。

最近のインタビューではもう「悔しい」しか聞いてない気がする。

フリーの日の公式練習で曲かけでクワドが決まっていたことを聞いて、少しだけほっとする。
感覚的なものは徐々に戻り始めてるのかもしれないと。

私はこの日、アリーナのキスクラに近い席で、出てくる選手とコーチがよく見えるところだった。
ゆづが出てきた時、袖口を見て、息を飲む。
新聞に書いてあったことを知らなかったので、ゆづが衣装を変えたことに気づいて、動揺してた。
いままで彼はシーズン途中に衣装を変えることはなかった。
一つの衣装に修正を加える事はあっても。
ジャージを脱いだ瞬間、あまりにも中国杯の衣装とちがうそれを見て、なんとも言えない気持ちだった。

あの衣装を着て滑ることはもうないのだろうか、と。
確かに新しい衣装も素敵だった。
大人びていて、洗練されていて、ノーブルなそれ。
もし、前の衣装を見ていなかったら、すっと、受け入れられたかもしれない。
私にとってはかつての衣装がファントムそのものだった。
包帯姿のイメージしかないあの衣装の記憶を塗り替えたかった。
でも、違う選択だったんだ。

あとで、血が落ちなくて新しい衣装になったと知った。
それだけが理由だったかどうかは私たちはしるよしもない。

リンクに現れたとき、ショートで出遅れた時のゆづがもつ独特のオーラは見えなかった。
いつもならものすごい勢いでトップでリンクに飛び出していくのに、そのスピードは控えめに見えたし、ガンガンとメニューにそってエレメンツを確認してく彼が、軌道や周りの選手ばかりチラチラ見ていた。
何をやるかもオーサーからの指示やアイコンタクトで選択している風にも見えた。
それでもクワドを2本決めていたので、もしかしたら、という淡い期待を抱いた自分がそこにはいた。

つづく。