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羽生結弦くんの応援ブログです。ここで記載されている内容はあくまでも私の個人的な意見であり、正当性を評価したものではありません。どのように受け取るかはそれぞれがご判断ください。

【SC2015】男子SP バラード1番の罠 

スケートカナダの楽しみの一つは公式練習が全部見れること。
もちろん写真も撮ることが出来ます。
なので、普段見れない、選手の表情を捉えることができる貴重な時間です。
私は2013年にカナダで見てからファンになったアイスダンスのアンドリューとケイトリンの公式練習も見たくて、朝早くからリンクへ。

今回のリンクももともとホッケーリンクを利用しているので、サイズは少し小さめ。
北米の大会ではこうした少し小さいサイズのリンクで行われることが多いようです。
もうすでに多くの日本人が席をとりに来ているなか、何となく全体が見渡せるジャッジ側の席につく。
写真を撮る目的で来ている人が多く、キスクラに近い前の方の列から人が埋まっていました。

日本では競技者も多くないし、あまり強くもないので、テレビでもあまりカップル競技が放映されません。
だから、なかなか興味を持つタイミングがないんですよね。
生で初めてこのアイスダンスを見た時はホントに衝撃的でした。
リンクサイドに風が押し寄せるようなスピード感とパートナーとの一体感。
シングルとは違う魅力がそこにはあるし、競技の特性上、絵になる人たちが多いんです。

今年のアンドリュー様のSPの衣装は正統派イケメンを引き立たせる素敵なそれ。
もう、練習から釘付けでした。

でも、もちろん本命は男子シングル。

1グループ目にはパトリックがいて、今年、どんな滑りをするのだろう、とマジマジと見ていました。
確かに皆さんが絶賛するように、スケーティングの素晴らしさはパトリック特有のものがありました。ただ、私もソチシーズンにスケカナ、GPFで生で彼を見て感じたイメージとは随分と違うものがそこにはあったかな、と感じてました。
そう、パトリックの一蹴りの伸びが全盛期ほどじゃないし、とくにエレメンツの入りがあっさりしてて、特にジャンプではスムーズじゃない感じがして。
ああ、やっぱり1年のブランクってそういう時間なんだと感じたのとともに、真央ちゃんが初戦でそれを感じさせなかったのは本当に凄いことなんだな、と感じたりもしていました。

そしてゆづ。
オータムを見た時に、ゆづの太もも周りが太くなったな、という感じがしてて。
彼の棒のようだった体つきも、オトナになってきているのかな、と。
ジャンプは特に4回転は調子がいいな、とは感じませんでした。
ただ、4回転の入りが昨年までに使ってたスリーターンに変わっていて確実にクワドを決めようという戦略なのかな?と思っていました。

そもそもこのバラード1番の演技構成は危険と隣り合わせのそれ。
たった少しの基礎点の向上のために、彼はそれを選択しているのです。
後半で4回転を跳ぶこと、そして、ジャンプの最後にコンボを持ってくることはリカバリが効かない一発勝負の構成です。
今年の試合に勝つことだけを考えたら、これは無謀な選択かもしれません。
敢えて選ぶ必要のないもだと思った人もいるでしょうね。

でも、私はこれを彼が選んだのは、今、この時のためではないのだとずっと感じていました。
(昨年、この構成が最初に発表されてから)

彼はもうすでに平昌オリンピックを見据えて戦っているんじゃないのかな?と思います。
このタイミングでもう一度、金メダルを手にするために何が必要かを考えているからこその選択。想像ですが、平昌ではSPでクワド2本、FSでクワド3本(もしかしたら4本)というのが表彰台の基準になるでは、と思っています。
そう考えると、SPでクワド2本を跳ぶための伏線としてこの後半クワドがあるのでは?と。
だからたとえリスクが高くても、ここで引くわけには行かない。
第二の羽生結弦が彼の座を狙っていることを考えたら。

シニアのライバルもそうだけど、怖いのは、爆発的に成長をしてくる若い世代。
しょーまかもしれないし、そーたかもしれないし、ボーヤンかもしれないし、ネイサンかもしれない。

だから、彼は危険を承知でチャレンジする。

今回の男子ショートは自爆気味な展開。
パトリックもエレメンツのキックアウトを受けて80点台からのスタート。
ちゃんと決まったジャンプが4T-3Tのみだったことを考えるとそれでも点数は上出来。

この点数を見て、私がふと頭によぎったのは、ゆづがこれなら勝てるという慢心を心に抱くこと。少なくとも2年前、スケカナでは同じようなシーンがあった。
パトリックの伸び悩む点数に気負いすぎたゆづが自爆して、出遅れたこと。

そうはならないで欲しいと思っていた。
ドラマチックな方向に、方向に向かう羽生結弦劇場。

演技が始まるといつもつい両手を重ねて祈るようなポーズを取ってしまう。
ひとつひとつのエレメンツが確実にこなせるようにと。

美しいイーグルからのトリプルアクセル
この跳び方のトリプルアクセルでは加点がもりもりつく。
+3しかもらってないんじゃないかな、この跳び方では。

悲劇はその後に起こる。
4Tが抜けて、2Tに。
ゆづのジャンプは転ぶことはあっても、あまり抜けることはない。
まさかの展開に息を飲む。

せめてコンボ決めようという思いは跳び上がった瞬間のずれた軸を見て、絶望しか感じなかった。ダブルを跳んだら、駄目だ、と分かっていた。
だから、3Tをつけるか、跳ばない選択しかなかったんだよね。
でも、本人はそれがルールでキックアウトされることに気づいてなかったらしい。
それだったら、ゆづがセカンドを跳ばないということはあり得ないよね。
その場でできる最大限のことを選んで、0.1点でも多く、積み重ねようとするだろう。

目の前で起こっていることが信じられなかった。
恐ろしい点数が出ることだけは容易に想像がついた。

キスクラで驚いた顔のゆづ。
そっか、気づいてなかったのか、キックアウト。

仕方がないことだけれど、彼も私たちも想像していなかった、ショートを6位で折り返すというハプニングだった。

皮肉だったのはあれほど、「ジャンプだけの選手」と揶揄された彼は3A一本と、その他のエレメンツで、何とか、6位に踏みとどまったのだ。
PCSの評価はパトリックよりも高く出ているものもあるくらいに。

それがソチシーズンからの彼の成長だったと思うし、バラード1番はその成長を彼にもたらしてくれたプログラムだったんだと思う。

本人はどんな気分だったんだろう。
こんな形で負けるわけに行かないと思ったのかな?
それは私たちには分からないけれど、私はだいぶ楽観的だった。

6位とはいえ、1位との点差は7点くらい。
たまアリの逆転劇だってそのくらいの点差をひっくり返している。
同じ奇跡が2度起こることだってある。

静かにその時間を待つこと。
最高のパフォーマンスができるように祈ること。

それが私にできる唯一のこと。