【GPF】ファイナル振り返り ~FS「ロミオとジュリエット」 世界を制した18歳最後の夜~
(※おそろしく長文です。暇な時にどうぞ)
前日からの熱気を帯びたまま会場入り。
公式練習ではジャンプの確認、曲かけでざっくり流している、そんな感じだった。
昨日と同様になにか見えないオーラに守られているようだった。
カナダ観戦で知り合ったゆづ仲間と一緒に思っていたことは、
とにかく試合で、4Sを決めて欲しいという思いだった。
だって、公式練習を見ていても、6分間練習を見ていてもちゃんと跳べることを、知っているから。
曲がかかって、流れの中で1度、決まれば、きっと、すっと、身体に馴染むに違いない、
そんな風に感じていたから。
ゆづが満足して演技を終えるためには4Sが決まることが必須だと思っていたから。
そして、今日は昨日の結果を受けての最終滑走。
前日の自爆大会からフリーはみんな渾身の演技だった。
ペア、アイスダンスで神がかったできだったので、その流れがきたようにも思えた。
1番滑走だったまっちー。
前日とは別人だった。
出だしから、ジャンプが決まってくれ、と祈りまくった。
いくつかのジャンプの着氷は強引な感じで足を痛めてないだろうか、とも心配した。
でも、絶望的だった昨日のSPからまさに不死鳥のごとく巻き返してきた彼は明らかに去年と違っていた。
演じ終わったあと、手で顔を覆う姿を見て、私もうるっとしていた。
よかったね、まっちー、「火の鳥」は素敵なプログラムだったよ。
コフトンも、ハンヤンもいまできることを着実に形にしようとしてた。
メダルを狙うにはちょっと実力差がありすぎたのかも知れない。
若い二人にはいい経験だったと思う。
アサインの妙が2人をここに連れて来たのは、これから続くオリンピックロードへ向けての
準備の一つだったのかな、とも感じていた。
この世界、運というか、巡りあわせも実力のうちだなとつくづく思う。
織田くんが出てきた時、なぜか、落ち着いて、とつぶやく自分がいた。
彼は大ちゃんの代わりにこの福岡にやってきた。
準備はしていたと言っていたけど、それでも心持ちは最初から決まっていたメンバーとも違うだろう。
そんな中で与えられたチャンスをものにする事、それがどれほど難しいか、競技生活を通じて、一番知っている人なのではないかな。
冒頭の4Tが転倒だったのを見て、悲鳴が出ていたと思う。
でも、その後はほぼノーミス。
あのステップはその日で一番、会場を沸かせたステップだったと思う。
何かを乗り越えたんじゃないか、そんな気がしていた。
苦しかっただろうGPS。
特にNHK杯。
周りだってびっくりしたジャッジングだった。
それを乗り越えてここで結果につなげたこと、絶対に財産になると思う。
得点が出てコーチと喜んでいる姿を見て、目頭がまた熱くなった。
オリンピックシーズンは一試合一試合がとても貴重。
その結果でどんどん様相が変わってくる。
そして、前日からちょっと様子のおかしかったパトリック。
練習でもジャンプがちょっと不安定なのかな、と思っていた。
ゆづにはもちろん金メダルをとって欲しいけれど、自爆したパトリックに勝っても仕方ない。
彼には王者としてちゃんと結果を残してほしい、そう思っていた。
冒頭の4T-3Tのコンビネーションが2Tになってちょっとひやっとしたけど、
それ以外の要素をまとめる力はやはり凄かった。
それでも、いつもよりスケートが滑っていなかったし、汗もいっぱいかいていて、どうしたのかな?と思っていた。
ほぼノーミスの192点台。
今日はゆづはPBを出さないと勝てないのかと頭のなかで計算していた。
180点overの自己ベスト。
大丈夫かな?と不安がよぎる。
後でインタビューの中で、本人も言っていたけれど、パトリックが凄い点を出したことを知りつつ、リンクインするのは怖かったと。
そんなことは感じさせない準備の所作だった。
ファンに出来る最大の応援は見守ること。
破裂しそうな自分の心臓のおとに言い聞かせる。大丈夫だから、と。
とにかく、4Sが決まってくれと、普段は信心深くない私なのに、祈った。
そんな都合のいい願いを聞いてくれるわけもなく、神様はつれなかった。
祈りも虚しく、4Sでは転倒。
ただ遠目に見ても、回りきっているように見えたのが幸い。
だって、これが3Sだと、ハーフループコンボが跳べなくなる。
そんなことを考えていた私の心をかき乱したものがあった。
私の席の近くが、出入口に近いところで、その階段に立って、ゆづを、見ていた人が、
その転んだ姿を見て、「やった!!」とガッツポーズをしてその場を去っていた。
一瞬、ボー然とした。
誰のファンかしらない。
だけど、これはない。
まだ、1本目のジャンプを失敗しただけだ。
ただでさえ体温が上がってきているのに、頭にまで血が一気に登っていくのを感じた。
いわゆる逆流の感覚。
ゆづ。
こんな力に負けちゃだけだ。こんなものに。
私はより強く自分の手を握りしめた。
悔し涙がこぼれた。
でも、悔し涙はいつしか、違う涙に変わっていく。
その場で喜んで帰った人は後で結果を見て、驚いただろう。
あの日の彼はカナダや、エリックの時とは違っていた。
立ち上がって、ものすごいスピードで4Tを跳ぶ。
SPと同じように、素晴らしいジャンプ。
そこからはまるで冒頭の転倒などなかったかのように決まっていくジャンプ。
どれも大きくて、綺麗だった。
ロミオとジュリエットの世界観がようやく形をなして、完成に近づいているなと、
感じさせてくれていた。
バルコニーにいた多くのジュリエットは、もう一度、そのロミオを見て、恋におちたに違いない。
最後のスピンでよろけた時、「頑張れ!」と心のなかで何度も、何度も、つぶやいていた。
本来、ジャッジ向けにフィニッシュを終えるはずが、反対側に向いてのフィニッシュ。
しかも、足元がおぼつかない。
本当にすべてを出し切ったんだな。
それでも会場はパトリックの時よりも大きな声援で彼をたたえていた。
まずは良かった、と息をつきつつ、すでに私の頭の中がTESの計算を始めていた。
ライストで見た人達はTwitterでのそのTESの合計点がずっと表記されているのを見ていたようで。
間違いなくTESは100を超えるだろうとは思っていた。
それに、パトリックのPCSも高かったから、190に近い点数がでてもおかしくないと考えていた。
パトリックを越えてくれたらと思いつつ、その時を待った。
点数が出て、それが193点台だったのを見た時にゆづがここ辿りつけたことに驚きと納得の両方が混在していた。
本人は出すぎた点に納得が行かなかったようで、点数に「ちがうちがう」と言ったように首を振っていたよね。
ま、確かにPCSは出すぎたと私も思う。
でも、仮にPCSが10点少なくても、チャンに勝った、そういうこと。
しかも4Sは決まらなかったのに。
その理由はブログでも書いたのでここでは省く。
今シーズンのはじめをカナダで見た時、戦う気持ちが空回りしていると、そう感じていた。
ポテンシャルがないわけじゃない、でも勝ちたい、オリンピックに行きたい、という強い思いは、
あまりいいように作用していないんじゃないか、とも。
ものすごい勢いで心配したけど。
彼はパトリック・チャンと戦い続けた結果、自分に足らないものに気づき、
ひとつひとつ積み上げてきた。
だからこそ、この舞台で結果を出すことが出来た。
驚くべきスピードの成長をともなって。
パトリックを抜いてグランプリファイナルを制したんだね。
おめでとう、ゆづ。
欲しかった金色のメダルを首から下げて君が代を歌う姿は神々しかったよ。
ジョニーデザインの衣装は表彰台に当てられたライトに映えて綺麗だった。
氷の上でも、光の中でも輝くように、という思いがこめられていたのかな、と思った。
演技中も泣いたけど、一緒に君が代を歌いながら、やっぱり泣いた。
幸せな、幸せな涙だったと思う。
この瞬間を同じ空気の中で共有できて本当に幸せだった。
ああ、やっぱりソチに行きたくなっちゃったじゃないかw。
だって、この結果で一気に君はソチの表彰台に近づいたよね。
その姿を現地で見たいと思ってしまうのは悲しい性。
ああ、遠いなー、ソチ。