【WTT】バイバイ、クリスティーヌ 〜ラスト・ファントムのつぶやき 2〜
【WTT】バイバイ、クリスティーヌ 〜ラスト・ファントムのつぶやき 1〜
泣いても笑ってもこれが最後のファントムになる。
その覚悟で代々木体育館に向かっていた。
ゆづを応援し始めてから、私の心を掴んで離さなかったロミオから解き放ってくれたのはファントムだった。
中国杯で見たこのプログラムは一生、私の心を掴んで離さないだろう。
(来年、あっけなくこの言葉が翻るくらいの素敵なプロに出会うこともどこかで期待しつつ)
あれは、妖艶で、力強くて、そして儚い、ファントムは私のイメージぴったりだった。
6分間練習で調子が悪かったのはクワドトウ。
昨日はあんなに綺麗にきまったのに、ね。
クワド2本を揃えるのは本当に難しいことなんだろうな、と感じる。
いつかゆづもそれを当たりまえのようにこなす日が来るのだろうか?
ラスト・ファントムの物語を目のまえにドキドキが止まらなかった。
あの強気発言の結果、彼が何を見せようとしているのか、とて楽しみで仕方なかった。
ムラくんもいい演技をして、いいポジションにつけていたので、ゆづもそれに続いてほしい、とそう思いながら、祈っていた。
会場の空気は昨日と打って変わっていて、コールの後はゆづの息遣いが聞こえてきそうなくらい静まり返っていた。
たぶん、競技が始まる前に、何度かコールの後に掛け声をかけないようにとアナウンスがあったからだろう。
たったこれだけで収まったと考えるのか、昨日とは客層が違うと考えるのか、どちらが正しかったのか、私には分からない。
でも、行動したことにはちゃんとした効果があったように思う。
ウォームアップで跳んだ3Aが綺麗に入って、今日は完璧なファントムが見れるのかも、と期待は膨らんだ。
静かに滑りだすファントム。
最初の4Sは目が覚めるほど美しいフォームのそれだった。
会場は一気に熱狂した。
続く4Tが3Tで着氷したのを見て、私は落ち着かなくなった。
どこでリカバリするんだろう、と。
NHK杯の時、やはり4Tが3Tになって、結果的には3Aを1Aにすることで跳びすぎ回避ができていた。一番、点数を失わずに済む方法はなんだろう、と頭を巡らせていいた。
だから、正直、彼が3A-3Tを3A-2Tで跳ぶまでのことをよく覚えていない。
選択肢はいくつかあった。
3Lz-2Tのコンビネーションを4T-2Tにすること。でも、これはリスクが高い。
そして2つ目は3A-3Tを3A-2Tにすること。
それ以外の選択肢は3Lzを2Aにすること。
でも最後の選択肢は前から踏み切るアクセルジャンプを跳ぶために軌道をかえることも余儀なくされるし、最後のジャンプで修正しきれないのは厳しい。
そんな状況で彼が選んだのは3A-2Tを跳ぶことだった。
彼はいままでもジャンプの飛び過ぎで同じ間違えを何度も繰り返したことはない。
N杯で体験してる彼はきっと、対策を用意しているだろう、という予想をしていた。
(どう考えてそれを選択したのかは本人に聞いてみないとわからないけれど)
それをちゃんとやってのける冷静さを持っていたということ。
ジャンプが決まる度に会場のボルテージは上がっていく。
最後のスピンのころには立とうとする人たちがウズウズしているのが分かった。
多くは4Tが3Tなったことに気づいていないようで、目の前でものすごいことが起こっていると思っているようだった。
GPFの時と同じフィニッシュポーズに戻した彼。
そうなるとますます上海のあれには何か意味があったのかを聞きたくなる。
私はファントムのラストはこのラストが好きだ。
その後、会場はもの悲鳴のようなものすごい歓声に包まれた。
私の後ろで「200点、超えるよね!」と言っていた方がいた。
4Tが決まっていて、そして、3A-3Tを3A-2Tでとんでなければね、と、思わずつぶやきそうになった。
生観戦もあまりしたことがなくて、ジャンプの見分けがつかない人にとってはあれは完璧な演技に見えたのかもしれない。
そんな歓声を彼はどんな複雑な気持ちで聞いたのだろう。
たしかにクワド2本は跳べなかった。
でも、確かにこのシーズンを駆け抜け、そして、ベストパフォーマンスに近いものをやってのけたことは本当に、本当に、素晴らしいことだったのだと思う。
完璧ではなかったけれど、まとまった見応えのある演技だったよ、ゆづ。
家に帰って演技をテレビでつぶさに見て、最後の最後に「ありがとう」と言っていることに気づく。その姿を見てこの日、初めて泣いた。
「ありがとう」はこっちのセリフだよ、ゆづ。
オリンピック後の難しいシーズンに加え、さまざまな試練を乗り越え、私たちに素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。
やりぬくことや、諦めないことを意味を自らが実践してみせた。
それがどれほど、尊いことか、分かる人には分かるはず。
会場ではそこまで細かく見れなかったけれど、このラスト・ファントムの所作は本当に美しかった。手の先までファントムだった。
それとともにとても男らしい表情で滑りきっていた。
もう、少年だった彼はそこにはいない気がした。
大人として、男として、ファントムの思いを演じているのだと感じることができた。
これからどんどん彼は大人っぽくなるだろうね。
可愛らしかったかれはどこかに残るのかもしれないけど、もう、すっかり男の顔。
ファントムはそういうプログラムだった。
彼は駆け足で大人への階段を登っていったかもしれない。
つづく
【WTT】始まりと終わり 〜バラード一番の世界〜
あくまで、それは予感めいたもの。
昨年までの状況や、怪我や手術の影響を考えるとそういう選択になるだろうな、と、感じたからかもしない。
なので、ワールドから帰ってきて、国別出場の話を聞いて、最初にしたことはチケット探しだった。
譲ってくださった方々、本当にありがとうございました。
おかげでこのシーズン最後のゆづを見ることができました。
私自身も始めての国別参加。
いろいろ様子もわからないまま、しかも仕事後に駆けつけたので、見たかったアンドリュー様も見れず。
ゆづは最終滑走。
どんなバラ1を見せてくれるのだろうと、期待は膨らみます。
今年はいろんな影響もあって、まだ、ノーミスの演技を見ていない。ここで、そうなったらいいなぁ、と思っていた。
事前に出ていた公式練習の映像からはゆづの軸の細い回転の早いジャンプが戻っているように見えた。
私の大好物のジャンプ。
国別に参戦したのは始めてだった。
会場の空気が今まで見てきたどれとも違っていた。
全体的に冷めた感じがする会場だった。
後で思ったことだけど、たぶん、初観戦の人が多かったんだと思う。
手拍子やスタオベもまばらだったし、声援もおとなしいな、と思っていた。
ゆづが出てくるまでは。
彼が出てきてからの会場の雰囲気は熱狂というか、狂気的なものだった。
たぶんスケート観戦のマナーも知らず、30秒ルールも知らないだろう人のギリギリまで続く声かけ。
ああ、今回もか、とあのたまアリワールドを思い出していた。
「ゆづるくん、落ち着いて〜」という声がかかったのは本当に音楽のスタートする直前だった。
落ち着くのは、そっちだと、突っ込みたくなったけど。
次の瞬間、スクリーンに映ったゆづの表情を見て、ほっとする。
あの時のようにその言葉に反応したりはしてなかった。
闘う気持ちが目に込められたいい顔をしていた。
ネットでこの件に苦情を言ってる人をたくさん見かけた。
昨年同様に私も納得のいかない思いを抱えてた。
でも、初観戦で、ネットにも詳しくない人が暗黙のルール的なものを理解できるか?と言われたら難しいだろうな、ということも分かる。
私自身も試合を最初に観戦したときは周りをキョロキョロしながら様子を伺っていたし。
これは個人の問題というよりは運営側がもう少し手をかけるべきだったというのが本質なのかとも思う。
演技中の席の移動や、写真撮影、コールされてからの掛け声について、こうしてくださいね、とガイドを出しておけば、少しは改善しただろう。
(もちろん故意でやる人は防げないけど)
翌日、何度かアナウンスがあって落ち着いたことを思えば、やっぱりそういう配慮があって然るべきだったと思う。
ゆづはそんなことには関係なくしっかり集中してショパンの音楽に身を委ねていた。
最初のクワドトウの軌道に入って、スリーターンが綺麗に描かれるのを見て、今日のクワドは大丈夫と、そう思ったよ。
ステップからの踏切。
美しい空中姿勢。
軽やかな着氷。
羽生結弦らしい、クワドが帰ってきたな、と。
よくゆづのことをジャンプばっかりと揶揄する人たちがいる。
フィギュアにとってジャンプはひとつのエレメンツ。
ただそれが得意なだけ。
私は彼の美しく軽やかなジャンプはそのものが表現そのものだと思うよ。
ジャンプ廚、上等。
美しいものは、美しいんです。
でもバラード1番の美しさはそれだけじゃない。
すべての動きがピアノの音を表現しているようなメリハリのあるしなやかなパフォーマンス。
スピンの緩急も音の流れにあっている。
うっとりする時間はあっという間。
そして、難しい入りの3A。
この苦しいシーズン、彼を何度も救ったジャンプ。
なかなかうまく跳べなくてと言っていた少年のころの彼。
いつの間にか自分の武器にしてたね。
アクセルは安心して見れる。
最後のジャンプは、鬼門のルッツからのコンビネーション。
フリーでは跳べるルッツがなぜショートでは跳べないんだろう、は私の今年の疑問だった。
ジャンプまでの入りが難しかったことを、その後のインタビューで知る。
それでもこれって確かにDOIで見せた時には、ウォーレイが入ってて、もっと難しかったはず。
観客にわかりにくいところでプログラムの難易度を上げて、自分の限界を広げて来たんだね。
でも、今回も最初のルッツの着氷がだいぶ前のめりで、無理やり3Tをつけてたから、転倒につながっちゃったよね。
見たかったノーミスの演技。
でもこういう現実もありかな、と思う。
まだまだやれることがあると上を目指して行ける。
終わった後、応援席に向かってごめんねと言うように手を合わせた姿を見て、何を謝るのだろう?と思っていた。
ミスはあったけど、間違いなく彼は1位で、12ポイントを稼ぐはずと。
きっと、チームにノーミスの演技で弾みをつけたかったんだろうね
それとも自分が言葉にしたことを実現したかったんだろうか?
有言実行は諸刃の剣。
分かっているだろうけれど、彼はそれを口にすることを躊躇わない。
彼を応援したくなる理由のひとつはそこにある。
どんな時も一生懸命、全力投球。
それがお祭り大会と言われるこの大会でも。
【World】決戦の地 〜王者であることの証明とは〜
2014-2015シーズンの羽生結弦の闘いは大歓声とともに幕を閉じた。本人ですら、こんな山あり谷ありの一年になるとは思っていなかっただろう。
【World】決戦の地 〜ファントムの帰還〜
二連覇、という言葉が自分の頭をかすめなかったか、と言ったら嘘になる。
昨日まで低かった期待のハードルが一気にあがっているのに気づいていた。
それと相反するように6練での彼の様子は昨日とはちょっと違っていた。
こづもムラ君も頑張ったし、いい演技だったけど、やっぱり滑走順が早いと点数は伸びにくい。
それはこの競技ではどこかで見られる光景。
ゆずがリンクに出るときには、彼が1位を取るしか、3枠を確保する方法はなかった。
それもプレッシャーになっただろうか?
本人に聞いて見なければ、分からない。
でも、自分の番がきてリンクでウォームアップしている彼のアクセルが入らなかった時、一瞬、やばい、と思った。
これがサルコウが入らなくなる暗示に見えた。
ジンクスに引きづられやすいところがあると、時々感じたから。
曲が始まって、GPFとはちょっと違うスピードのないサルコウまでのステップ。
怖々と跳んでるという感じだった。
そして、クワドトウへの軌道。
今日も浅いスリーターンだった。
何とか堪えてくれたらと思う淡い期待は無駄に終わる。
もしかしたら、このまま、崩れてしまうのだろうか、というのが頭によぎる。
いつものように気づくと祈りを捧げるかのごとく両手を組み合わせて強く握っていた。
「勝たなくてもいい、滑り切ってほしい」と思っていた。
比較的、よくできていた昨日のショートで気になることがあった。
氷の質のせいなのか、本人の問題なのか、彼のブレードが氷をガリガリと削る音が聞こえていて、NKH杯の時のようだと感じていた。
もちろん専門的なことはわからないんだけど、何度も何度も、彼のよかった試合をビデオで見るせいか、うまくいかない時の違和感を最近は感じるようになっていた。
何かが昨日とは違うと。
最悪の事態も覚悟した。
だけど、羽生結弦は羽生結弦だった。
フリップからの3回転ジャンプにはひとつもミスがなかった。
後半で恐ろしく点を稼ぐ3Aからのコンビネーションの安定感は信頼できる。
それでもいつもの彼のそれに比べたら、綺麗に着氷できていなかったけれど。
だって普段のゆづの3Aはもっと美しいんだよ。
この日はなんだか力任せに飛んでいるようにすら見えた。
だから、あの「手抜き」記事の言いたいことは分かる。
でも、言葉は選んで欲しかった、そんな気がする。
私にとっては一番、ファントムを演じていると見えたプログラムだった。
中国杯のそれは、ファントムに憑かれているようなそれだった。
あれは二度と出来ないパフォーマンス。
ファントムはずっと自分の想いにもがき苦しんだ。
憧れるものを手に入れことが出来ないもがき。
このシーズンに起こったことは彼がファントムの心情を理解するために必要だったステップなのかもしれない。
思い通りにならないことばかりのシーズンそのものが。
もがき苦しんで、最後まで滑り切るためにか、自分に喝を入れるように叫び、そして最後に自分の思いも、ファントムの思いも昇華させ、終わらせるために、いろんなものを振り切るような勢いのある仮面を外すポーズだった。
勝負には勝てないかもしれない。
デニスには勝っただろう、でも、ハビには抜かされるかもしれない、と思った。
次のハビの4回転が決まった時、今日はゆづの日ではなく、ハビの日だと素直に納得できたし、負けたのがハビで良かったとも感じていた。
きっと、一番嬉しい仲間の勝利で、
きっと、一番悔しい負けだったと思うから。
それでも、ファントムは間違いなくここに帰還して、
自分がここに存在したことを示して、舞台を降りた。
再演の可能性を仄めかして。
このプログラムを最初に見たときから、ゆづにあったプログラムだと思った。
GPFのパフォーマンスは私の中で、ニースを超えた。
でも、このプログラムにはまだまだ改善の余地がある。
本来の構成で、いやもっと進化した構成で、シェイリーンのブラッシュアップとともにこのプログラムが見れる日をファンは妄想してしまうよ。
この環境での台乗りは十分な結果だと思う。
頑張ったね、と言ってあげたい気持ちもある。
それはちょっと、言葉としては違う気がしている。
なぜなら、彼はきっと一番高いところに立つつもりで、準備してきたのだろうから。
だから、悔しいを連発したんだと思う。
それなら、私の伝える言葉は「次は表彰台のてっぺんを取り返そう」だ。
また、挑戦者としてそこを目指すことができるのは幸せだよね。
報道や周りの人の言葉を聞いたりすると、もう羽生結弦は当然のようにトップに立つことを期待される選手になったんだと感じる。
あいつなら、どんな状況でもやるだろうと。
だから、2位以下は負け扱い。
ゆづがなりたいと切望した絶対王者としてもう世間は見ているってこと。
だから、言葉も厳しくなる。
トップに立つアスリートが孤独だというのはそういう側面もあるんだろうね。
勝つことより、勝ち続けることのほうが難しい。
追うもののない自分との戦いは苦しかっただろう。
次は追う背中が見えた。
そうは言っても、道のりはさらに険しそうだけども、
何もできないから、ただ見守り続けようと思う。
ファンにできることってそれしかないんだよね。
財布の紐を緩めまくって、ついていきますw。
つづく
【World】決戦の地 〜締めくくりのバラード〜
ただ、もう、見守るしかない、そう思って上海入りした。
2度目の上海。
そしてここはあの強烈な思い出を作った街。
あの事故から始まったグランプリシリーズ。
何かに憑かれたようにファントムを演じた彼。
あの時と同じ会場で彼が滑り切ってくれること、それだけを祈っていた。
結果は二の次で、元気で滑っている姿が見れればいい、とどこかでそう思っていた。
中国杯のときの緩い感じの運営は、セキュリティの強化とボランティアスタッフの増員などでカバーされ、ずいぶんときちんとしたものだった。
ゆづの滑走順にたどり着くまえから、日本男子は厳しい戦いになっていた。こづも、ムラ君も想定外の順位に沈む。
まかさこのふたりにこんなことが起ころうとは思いもよらなかった。
SPの要素抜けはきつい。
点数的にも、心理的にも。
男子は想定外の順位になった選手も多かったように思う。
会場のスクリーンには時々、後の組みのウォームアップシーンが映される。
ゆづやハンヤンが映ると、リンクサイドでスタンバイしてる選手をそっちのけで歓声があがる。
その熱狂ぶりは少し怖いくらいだった。
そこからはもう目も心も奪われて良く覚えてない、かもw。
【雑感】静寂の中の情熱
最後に氷上で彼を見たのは12月末。
あれからほぼ3ヶ月。
ぱらぱらと情報は出てくるものの、どれが信用できるのかわからない状況。
本当はいつ退院したのか、いつから練習できているのか、捻挫の状態はどうなのか、
そもそも、どこで練習していて、どんな心持ちでいるのか。
何も今は分からない真っ白な状態。
便りがないのがよい便り、と思いたい今日このごろ。
本当に彼のマネジメントは優秀だね。
情報を統制しておくのはとても難しいのに。
オリンピックチャンピオンとして有名になった彼。
熱狂的というより、狂信的なファンがどこまでも彼を追いかける。
もうそれはアスリートに対する行動とは思えない。
苦言を呈したところできっとそういう人たちが変わらないことは分かっている。
それは応援ではなく自分を満足させる行動。
そういう発想のない人に言葉をかけるのは無駄だと知っている。
だからこの3ヶ月間、情報が表に出なくてよかったと思う。
もちろん心配は絶えない。
世界選手権を前にどんなコンディションで何をしているのか?
私たちにどんなプログラムを見せてくれるのか?
そもそも元気なの?
スケート楽しんでる?
こういう静かな時間を私たちが過ごせるのもあと少し。
来週の今頃には上海入りのニュースが入るでしょう。
それまで首をなが~くして、待て、ということなんだよね。
彼の世界選手権はいつもドラマチック(いや、人生そのものがドラマチックだけど)。
「世界を狂わす17歳」に惚れ込んだ2012年。
しばらくショートの映像をリピートできなかった苦しい闘いだった2013年。
さいたまアリーナでのまっちーとの死闘にハラハラした2014年。
ほら、そんなことばっかりだよ。
だから、どんなことが起こっても目の前でそれを見届ける覚悟はできている。
「羽生結弦」の挑戦も覚悟もよく分かったシーズンだったから。
あの事故の起こった会場で最後に笑って終われるシーズンになるように祈るしかない。
祈りながら、美しいバラード1番や力強いファントムが見れることを楽しみにしてる。
この静寂の中で新しい壁の向こうを見るためのパワーを溜め込んでいるに違いない。
この静けさにはきっとキミの情熱が隠れている。
あの会場で、あの気迫のファントムを超える演技が見れたら、思い残すことないかな?
いや、それは多分、ない。
数分後にはもっと凄い彼のプログラムを見たくなっているな、多分。
さて、上海行きの準備をするか、な。
【雑感】羽生結弦の進化と採点について
おかげで私はルールの勉強やエレメンツの勉強に力が入った。
たった2年しか真面目に追いかけてないとは思えないほど、詳しくなった。
それがいいことかどうか、自分でも分からないけども。
ひとつ言えることがある。
大きな声で文句を言っている人の多くはルールを知らない。
中にはルールを熟知した上で、異論を唱えている人もいる。でも、それはごく少数。そして、それは誰かの点をどうにかしろという話ではなくフィギュア全体のことを考えてのこと。
なぜ、って。
佐野さんも言っていたように彼の強さの一つはジャンプ構成の強さにある。
これを落としたというのだろうか、とその発言に笑ってしまったのを覚えている。
そして、ジャンプの種類を見るとよく分かるけれども、ジャンプの種類もルール変更にどんどん対応している。
ハーフループからのコンビネーションはソチシーズンから取り入れている。
今年はダブルジャンプを飛ぶ回数にも制限が加わった。
2012年までのゆづの構成だったら影響を受けたと思うけれど、それは2013年にすでに克服している。
さらに彼の凄さはクワドが2種類跳べることよりも、3Aの安定感。
4Tのつもりが、2Tなんてことになると、10.3の基礎点が1.3になる上、コンビネーションで、2Tが跳べなくなって、ザヤってしまう可能性まで出てくる。
回りきって転ぶことの方が見た目はさておき、点数が取れるのがいまのルール。
全日本を振り返って、こづとしょーまとのジャンプ構成と比べてみる。[予定構成]
- スケート技術 (Skating Skills)
- 要素のつなぎ (Transitions)
- 演技力/実行・遂行力 (Performance/Execution)
- 振付け (Choreography)
- 曲の解釈 (Interpretation)
全日本雑感【男子全般】
全般と言いつつ。
後は自分の印象に残った選手を何人か。
しょーま。
いや、驚いた。
シーズン始まる前、しょーまはいいんだけども、ジャンプがね、とみんなが思っていたはず。
ジュニア最後のシーズンにまさかあんな短期間で3Aも4Tも習得して、当たり前のようにプログラムに入れてくることは想像できなかった。
安定感はシニアのお兄さん達より凄かった。
ピョンチャンのメダル候補と言っても言い過ぎじゃないと思う。
ゆづとのトップ争いがとっても楽しみ!
来年はもう1種類のクワドに挑戦するとか。
ワクワクするね。
そーたくん。
ショートもフリーも3A以外はほぼ完璧。
もちろん表現の部分ではもうちょっとかな?と思うところもあるけど、14歳と思えば素晴らしい。
スケーティングのスピード感もいい。
来年はそーたくんを見にジュニアの大会にも行きたい!
どんな風に進化していくのか、本当に楽しみ。
岩手の佐藤くん。
雰囲気が明るくて、織田くんを彷彿させる演技でした。
季節リンクでしか練習できないと聞いたので、そんな中で頑張っているのは凄いな~、と。
ジュニア世界選手権に出られるらしいので頑張って!
ダイス。
NHK杯の覚醒ぶりを見て、期待してた。
たぶん、彼自身も自分に期待してたんじゃないかな?
最終グループでフリーを滑る彼はいつものような明るさというか、軽快さがなかったような気がして。
ちょっと残念だった。
でもね、四大陸選手権に出られる。
まだ進化をするチャンスができたね。
いつもにこやかな笑顔に癒されてます。
それと、ダイスの4Sが好き。
ムラくん。
今年のプログラムはどっちも好き。
だからまとまりきらなかったのが残念だった。
でも、悪い時もそこそこで収められるようになったのが今年の収穫じゃないかな?
クワドの確立もあがったよね。
ファントムの白手袋がとってもお気に入り。
今年のたくさんのオペラ座のなかでは一番、正当派のファントムだった気がするよ。
まっちーからもらったチャンス、是非生かして、世界選手権でも頑張ってほしいな。
そして、こづ。
フリーの日、私を泣かせたのは彼だった。
(もう、泣いてばかりの全日本だったよw)
ショートの失敗を見て、奮起して欲しい、と心から願った選手の一人だった。
こづにはこのまま終わって欲しくなかった。
フィギュアが分かるようになるにつれ、こづのスケーティングの素晴らしさが分かるようになった。
素敵なスピン、何杯でもご飯を食べれそうなイーグル。
ジャンプさえはまれば、と何度、思ったことか。
こづが出てきて、会場中が彼を見守っている温かい空気があった。
私と同じように思っていた人も多かったと思う。
何とかクワド2本を着氷して、怪しそうなジャンプも絶対転ばない、という意志が伝わる演技だった。
そして、彼のガッツポーズ。
あんなに感情を露にした彼を見たのは初めてだったと思う。
最後のスピンのころから涙があふれてきた。
素晴らしい演技だった。
要素のひとつひとつを見れば確かに満点ではないけれど、ここで結果を残したい、いい演技をしたいという気迫が伝わってきて、応援せずにはいられなかった。
たぶん、この日、一番のスタオベはこづにむけたものだったと思う。
それでよかったと思った。
こんなを目の前でみれて本当に幸せだった。
表彰台に乗れてよかったよね。世界選手権でも素敵な演技を見せてね。
番外編。
ショートのとき、GoodLuckというドラマの曲で滑った小沼くん。
まったく知らなかったけど、そのプログラムの世界観にとっても惹かれた。
第一グループで唯一スタオベされてた男子だった。
エレメンツの難易度が高かった訳ではないのだけど、そのまま空に飛んで行ってしまうのではと思えるような雰囲気のある演技だった。
普段、あまり見ることのできない選手を見ることができるのも全日本選手権のいいところだと思う。
これが最後の全日本だと聞いて。
このプログラムが見れてよかった。全日本選手権で披露してくれてありがとう。
他にもたくさんたくさん感じたことはあったけども、いろいろ衝撃過ぎて飛んじゃったところも。
競技の観戦はとっても楽しいんだけども、体力も、気力も奪われる大変な趣味だなを実感する全日本でした。
全日本雑感【町田樹という奇跡】
いろんな驚きがあった全日本だったけども、やっぱり一番の驚きはまっちーだった。
ブログにも何度も書いた通り、ゆづを追いかけて行く中で現地でパフォーマンスを見るたびにまっちーの演技が好きになった。
特に去年のショートプログラムの「エデンの東」は何度も何度も見たくなるプログラムだった。
世界選手権のとき、あのまっちーに負けるのなら仕方がないと素直に思えた。
2人の得点の差はジャンプ構成の差でしかなかったと思う。
その後のインタビューでのやり取りを見て、今年もそういうワクワクした試合が見れるのだと期待してた。
だけど、結果はみなさんも知っての通り。
GPFの時から少し様子が違っている、と感じていた。
負けていることがちっとも悔しそうじゃないんだよね、表情を見ても。
あの時はいろいろと重なってたからかな、とも思っていた。
素晴らしいできただったショートのとき、なぜ、彼の目が潤んでいるのか分からなかった。
彼のポテンシャルなら、あのくらいは普通に出来る結果だし、いい演技だったし。
この時も、もう、いろんな覚悟をしてたんじゃないのかな、と終わった後だから、感じる。
最後の「第九」。
そう思って、見ればよかった、と何度も思った。
すべてをその場でつぶさに見つめたつもりだったけれど、たぶん、覚悟のないまま見ていた。
そして、ふと感じていた。
まっちーが勝つことを目的としてこの第九を滑っていないのでは、ということ。
跳べなかったコンビネーションをリカバリすることなく演技をし終えた彼を見て、違和感しかなかった。
もちろん作品の完成を常に口にしていたけれど、それは勝つことも含めてだと思っていたから。
「第九」は未完のまま終わったプログラムになった。
それでも、ジャンプ以外では彼が伝えたかったことは十分に形になっていたような気もする。
欲張りな私たちはジャンプも含めたこの作品の完成を見てみたかった、と今でも思うけれど。
録画で演技を何度も見返すくらい、ジャンプだけではないプログラムの質の高さがそこにはあった。
いつから彼がこの結末を用意していたのか私にも分からない。
でも、去年の白夜行のことを考えれば、彼が第九を春にやろうと思っていなかったのかもしれない、とそういう考え方もある。
きっと、私はそう思いたくなかった。
もっと彼の舞台を見ているような演技を見続けたかったから。
ギリギリのところで争う羽生結弦と町田樹を見たかった。
もう、かなわないことだけれども。
MOIの日は最前列。
とてもいい席で、製氷後の綺麗な氷にまっちーのスケーティングの綺麗な軌跡だけがあった。
すべての動きを見逃すまいと、一生懸命にその姿を見守った。
涙は自然にこぼれた。
その涙に自分が驚いていた。
そして、この姿がもう見れなくなる、ということが信じられなかった。
ある意味、私は贅沢だったと思う。
町田樹という選手の一番、いい時期をしっかりと現地も含めてみることが出来た。
そして、最後の瞬間をこうして目に焼き付けることが出来た。
フィギュアスケート界において彼の存在は稀有な、そして、奇跡的な存在だったと思う。
似た者のない「町田樹」という個性が大きな輝きを放つ存在だった。
ありがとう、まっちー。
素敵なプログラムを演じてくれて。
これからの新しい道で満足のいく結果がだせるよう心から祈っています。
そんな涙ぐんだ顔をテレビに抜かれたことも思い出として覚えておきます。
・・・もっとカワイイ若い子を抜いてくれたらよかったのに・・・。