【WTT】バイバイ、クリスティーヌ 〜ラスト・ファントムのつぶやき 2〜
ラスト・ファントム。
これほど見応えのあるプログラムでも、シーズンが終わるとお蔵入り。
多くの羽生結弦ファンと同じように、構成も、振り付けもブラッシュアップしてオリンピックシーズンに見たい、と最後に思っていた。
アイスショーでも見たい、という意見もあるかもしれないね。
私はこのプログラムはピリピリとした緊張感の中で、見たい。
触れたら、手が切れてしまいそうな空気をまとった彼の真剣勝負だからこそ、あのファントムが見られたのだと思うから。
でも、あと、何本、彼の新しいプログラムを見られるかと考えると、違うものを見たい、という気持ちが混じり合う。
もう、はっきりわかってることは彼のパフォーマンスの中毒になっている、ということ。
この濃密で、美しく、激しいこの数分のために一生懸命になっている自分を時々、滑稽に思ったりもするのだけど。
ゆづが、ラスト・ファントムの演技中に、気持ちが入っていたから「バイバイ」って言ったとうシーンを見て、ちょっと、ふいた。
ゆづ、そこはバイバイじゃないよ、と突っ込みたくなった。
確かに振られたんだけどね。
ファントムがクリスティーヌの手を離したのはたぶん、愛を感じなかったからじゃないかな、と私は思っている。
キスには温度がある。
キスで伝わってきたクリスティーヌの心の温度はファントムが期待してたそれではなかったんじゃないかな?と。
だから、手を離す覚悟をした。
彼女を愛してたから。
なーんて、深読みする私に、彼はストレートに「バイバイ」と。
それが等身大の羽生結弦なんだなぁ、というのはとても感慨深げだった。
余計なお世話なのはよ〜くわかってるけど、離したくない人を、その人の幸せを祈って手放す気持ちがわかるような恋をして、もっと違う言葉が出てくるくらい大人になった彼のファントムも見てみたい気がしてる。
「バイバイ(さよなら)」だけが別れの言葉じゃないことを知った羽生結弦がどんなパフォーマンスをするのか、なんて考えただけで、ゾクゾクするよ。
(ただの妄想でw。)
試合後、プロトコルを見て思う。
彼がライバルにきっちりと勝つことだけを考えるなら、フリーでも、クワド1本、後半3Aコンビネーション2本だけで十分なんだな、と。
確実にプログラムはその方が安定するだろう。
彼の強みはジャンプだけじゃないから。
それがフィギュアスケートだという人がいるのも知っている。
その選択は彼にはない。
来シーズンは今年、できなかったクワド3本に再度トライしてくるだろう。
平昌までの道のりの中でもしかしたら、4loも構成に入ってくるかもしれない。
守りに入らない王者はフィギュアスケートの未来を自らの手で切り開こうとしてる。
先人がそうしてきたように。
それをリアルタイムで、生観戦できるこの環境にいまは感謝してやまない。
同じ時代に生きることが、できることに何度も、何度もありがとうを伝えたい気分。
バイバイ、クリスティーヌ。
ファントムは君から旅立ち、次の新しい舞台に立とうとしてる。
私たちはその幕が上がるのをワクワクしながら、待っている。