【世界フィギュア】それは「愛」じゃない

たいてい試合観戦の日は眠れない。
いろんな感情が渦巻くから。

本当はそれは演技に対するものだったりするのだけど、今日はそれよりも先に書かなきゃいけないことがある。
それはフリーにつなげるため。
一人でも多くの人に気持ちを伝えたいから。

ソチオリンピックで金メダルをとったことで「羽生結弦」を知った人、ファンになった人がたくさんいること、それは至極当たり前のことなんだけれど。
そして、公式練習のルール違反のカメラ撮影とか、黄色い声とか、の話を聞いて、少しづつ学んでくれたらいいと思っていたし、私は「ニワカ」だからといって排除する気もなかった。
だって、誰だって最初は「ニワカ」だと思っていたから。

だけどね、今日は我慢しきれなかった。
もし、あの人達が私の身近にいたら、私は犯罪者になっていたかも、というくらい殺意がわいた。

今日、ゆづがコールされて、ポジションについてから奇声をあげていた方々。
あなた達は何をしに来たのですか？
応援している選手の邪魔をしにさいたまスーパーアリーナまでやってきたのですか？

今年はオリンピックがあったから、そちらに注目も集まったし、騒がれもしたけれど、
世界選手権という大会はフィギュアスケーターにとって一年の締めくくりの大会。
今まで滑り込んできたプログラムを昇華させ、結果につなげる大事な大会。
この大会の成績で来年の世界選手権に日本から何人のスケーターが出れるかが決まる。
そんな大事な大会なんだよ。

そして、ゆづはオリンピックチャンピオンとして、勝つことを期待されてこの試合に望んでいた。
オリンピックで金メダルをとった選手はあまり、そのあとの世界選手権には出ない。
大抵はモチベーションが保ち切れないから。
もしくは選手生活の集大成として、オリンピックメダルを取ることが多いから。

そういう意味でも彼が世界選手権の金メダルを持たず、10代のこれから伸び盛りの選手がオリンピックチャンピオンになったことも本当に珍しいこと。
注目されるのは仕方ない、そう思うよ。

でもね、彼を好きになったのなら、彼が必死で向き合っている世界を尊重することをもうちょっと考えて欲しい。

選手にとってコールされてから、自分が演技に入るまでの時間は大事な集中のための時間。
呼吸を整えて、自分のやるべきことを意識して、エネルギーを貯めるタイミング。
しかもコールされてから1分以内に演技をはじめなければならないから（違反すると減点されます）、それを含めて選手はその時間の使い方を普段から意識しています。

はっきり言います。
セットポジションについてからの声がけはその集中を途切らせる、そういう威力があるものです。
あなた方はそこで「愛」を語りました。
本当に必要なことでしたか？
あれは誰のための声がけですか？

その瞬間、彼がその言葉に反応したのはスクリーン越しでも見て取れました。
そこに意識を取られたのか、集中しきれなかったのか、
出だしのタイミングが合わなかった瞬間を見て、私はスケートカナダを思い出しました。
このまま崩れてしまうのでは、と心配になり、心のなかで「落ち着いて」と私はずっとつぶやいていました。

もう、何度も何度も見た「パリの散歩道」。
4Tへ向かう軌道はいつもと違っていました。
踏み切った瞬間、このジャンプは失敗する、と分かるジャンプでした。

今日のゆづの凄かったところはこの後の挽回。
90点以上の点が出るのをみて、ほっとしました。
ああ、今日も彼は乗り切ったと。

でもね、やっぱり、私はあの歓声を許すことは出来ませんし、
そんなひとりよがりな愛を愛だなんて私は認めません。
彼が素晴らしい演技をするのを見たいのなら、絶対にやっては行けない行為の一つです。
それのくらい考えれば分かるよね？なぜ考えないの？
選手がどうしたら、良いパフォーマンスが出来るのか、考えてみたことがある？

自分が運動会の徒競走に出ていて、まさにスタートしようとした瞬間、がんばって～なんて声が上がって、最高のスタートが切れると本当に思いますか？

悔しいのはそれが同じ選手を応援しているファンだという事。
だからこそ、私は声を大きくして言いたいのです。

ゆづファンが増えるのは嬉しい。
その良さを理解してくれることは本当に素敵なことだと思う。

だからこそわかってほしい。
本当に選手にとって大事なことは何なのか、ということを。

フリーまでにちゃんと考えて、選手のためになる応援が何かをちゃんと理解してくれることを願います。
私のそばでそんなことをしているゆづファンを見つけたら、説教部屋に連れて行きますので、覚悟しておいてくださいｗ。