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羽生結弦くんの応援ブログです。ここで記載されている内容はあくまでも私の個人的な意見であり、正当性を評価したものではありません。どのように受け取るかはそれぞれがご判断ください。

【SC2015】男子FS 荒ぶる「SEIMEI」

スケカナの朝は早い。
公式練習を見てから、試合に臨むとちょっと安心できる。
練習の状態でこの日の結果をある程度、想定できるから。
なので、練習からリンクにずっといる羽目になる。

この日のゆづは練習も一番滑走。
リンクインした時から殺気みたいなものを纏っていて、ピリピリしてて、闘志が全面に出ていることが分かる空気感だった。
今日はなんとしても結果を残す、という決意が見て取れた。

練習の一番滑走だとあまり体が温まらないうちに、自分の曲かけがやってくる。
それを分かっているからか、次から次へとスピードを出して、ジャンプの確認をし、間に合わせようとしてるように見えた。
曲かけ練習にはそれでもアクセルもクワドも入れて確認しようとしてた。
今回はクワドトウが綺麗に決まらないことが多いと感じていた。

ゆづのクワドはホントに軸が細くて綺麗。
そして流れるように着氷する。
軽くて、美しくて、ジャンプそのものが別次元。

練習の中でも、試合でも、今回はクワドに入る軌道を何度も何度も確認をしているように見えた。このリンクはホッケーリンクで国際大会のリンクとしての規格より少し小さい。
それは彼みたいにジャンプをも綺麗に音ハメしてプログラムを演じる選手にとって影響のあることなんじゃないかな、と思う。
本来の助走から軌道を変えて、音に合わせるように速度を落とすのか、距離を稼ぐのか調整して、そしてクワドを跳ぶ。
練習の中でも壁に近づきすぎたりしている様子が何度も見て取れた。

もちろん他の選手との条件は同じだけれど、スピードが出る選手の方がやはり調整が必要になってくるんじゃないか、と見て感じていた。

2012年の全日本あたりから試合観戦をスタートして、ゆづが朝の練習の時にはあまり調子が良くないことを知ってる。
だから、この時もあまり完璧という感じではなかったけれど、まあ、こんなものかな、とも思っていた。

ちょっと気になったのはクールダウンしながら他の選手を見てたり、最後はクワドサルコウを跳ぶあたりの氷をまじまじと見つめて何か、ブツブツと言ってたこと。
ナーバスになっているのかな、と感じていた。

今日はどんな結果が待っていようと、もう、自分を信じてやるしかない。
信じられる自分をどう持ってくるか、それが今日の彼のミッション。

女子のフリーを見ながら、リーザが底力を発揮して、2位まで順位を上げたのを見て、つぎはゆづの番だ、とそう思っていた。

試合の時はいつもそうなんだけど、ゆづの出番が近づいてくると、胃が痛くなって、心拍数が上がる。そして、息苦しくなって、体温ががっと、上がる感じがする。(絶対、体に悪いw)

彼の写真を撮れる瞬間ってたいてい立ち止まっている時だから、6練の前にファインダーを覗いて、
ものすごいオーラと、リンクを凝視していた瞳を見て、が何か凄いことが起こりそうな予感をさせていた。
荒ぶる「SEIMEI」がそこにいた。

練習をギリギリまで時間を使って、ジャンプを確認。
やっぱり、クワドは調子がよいとは言えない感じ。
これだけジャンプの前に助走がないというのはホントにヒヤヒヤ。
これをやり切ると決めているのだから、私たちは見守るしかないのだけれど。

スタートポジションに立ってポーズを取った彼は音と共にリンクに滑りだした。
心配だった冒頭のクワドサルコウが綺麗に入って、私も会場もボルテージが上がる。
私の後ろにいたカナダ人はかれのジャンプが決まる度に、ウォー!と叫んでいた。
2つ目のクワドトウが決まった時、ああ、これで少なくとも台に乗れるところまではなんとかなる!とそう思っていた。
まったく助走のないところからのフリップ。
前半を滑りきって、あのレベルの取れなかったステップへ。
もちろんいろんな点で改良してきたのだろう。
あとでプロトコルを見るとちょっとだけ改善していた。

後半にはいって、鬼門のクワドトウ。
抜けてしまうことが一番、怖かった。
その後のジャンプを変更しなきゃいけなくなるから。

お手つきだったけど、セカンドジャンプまでなんとかつけて、クワド3本の着氷という目標をクリアしたのだけれど、いつも彼を助けてくれていた3Aのコンボでセカンドが1Tになってしまう。
後半のジャンプは全体的に軸のバランスが悪かったように思う。
それでも、今日はやり切るんだという気迫がどう見ても体勢がくずれた中からも3連コンボを決めさせたのだろう。安定のループ、最後のルッツで転倒。
プロトコルでは刺さってなかったけど、あのルッツはたぶん、回転不足。

つかさ、なんなのその助走のなさは。
フリップも、ループも、ルッツもほとんど助走のないところからいきなりジャンプを跳ぶ。
こんなことができるのはたぶん、彼だけだ。
そして、これがたぶんクリケットの戦略。
いまできる最大限を組み込んだプログラム。

これを実行することができたら200点を超えるのは間違いないと思える攻めのプログラムになっていた。

フィニッシュポーズの後、歌舞伎などで見えを切るみたいに、頭をブンっと振って何かを振りきっていた彼。
氷に住んでいた自分を追い詰める悪霊を振り切った瞬間だったのかもしれないね。
今日の荒ぶり方はあのニースロミオを彷彿させるそれだった。
最後は「SEIMEI」ではなく、素の「YUZURU」になっていた気がした。
それも爆発力を出すために必要だったのかもしれないね。

まずはやり切って、後は他の選手の結果を待つばかり。

パトリックがノーミスで滑りきったとき、ああ、これはパトリックが持って行ったな、と思っていた。
たとえ、クワドが1本だろうが、コンビネーションジャンプの2本目がほとんどダブルだろうが、ジャンプ前の助走が長かろうが、つなぎが薄かろうが、ノーミスで、ここはカナダ。

ナムくんにも、神演技のダイスにも渋いGOEとPCS。
意図を感じるな、盲目的に信じろと言われてもね、無理です、これは。

でも、あの状態から、ゆづが2位になれて、グランプリファイナルへの可能性をちゃんと残して、この大会を終われたこと。
そしてたくさんの課題を見つけたことは彼にとってはよかったことなんだろうな、と思う。

表彰式でもそんな晴れ晴れとした表情でパトリックやダイスとニコニコ笑ってた。
やりきれなかった自分に対する憤りはあったかもしれない。
でもね、彼にはそういうものが必要で、それが彼のエネルギー源みたいなものだから。
それらを取り入れて、また、彼は強くなる。
いつもそれを実感させてくれる。

NHK杯ではきっと素敵なバラ1を、洗練された「SEIMEI」を見せてくれるのでしょう。
パトリックにはGPFでリベンジがきっとできる。
いつもピークが合ってくるこのタイミングで、羽生結弦ができるすべてを出し切った勝負が見れる。

クワド1本でも(ま、GPFが2本かもしれないけど)勝てる、かどうかはそれを見てから判断でもいいと私は思う。