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羽生結弦くんの応援ブログです。ここで記載されている内容はあくまでも私の個人的な意見であり、正当性を評価したものではありません。どのように受け取るかはそれぞれがご判断ください。

ファントムの涙 2

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冒頭のサルコウが抜けたとき、やばい、と思っていた。
確かに、昨シーズン、ほとんどサルコウが着氷することはなかったけれど、回りきらなかったことはなく、その実行力に感服したほどだったのに。
たぶん、サルコウがダブルになったのは2012年のGPF以来じゃないかな?
次の4Tは3Tでしかも、転倒。
まさかこんな出だしで始まるとは。

私がゆづの競技を見はじめてから、こんなに儚げな彼を見たことがないんじゃなかな。
どんなにフリルの可愛らしい衣装を着ていても、中から湧き出る闘志がそれを凌駕するのが彼。
「フリルを着た阿修羅」なんて言われるくらいに。
気迫と、気合で、大きな壁を乗り切ってきたのだろうと思う。

私も呟いたし、あとのインタビューで本人も言っていたけれど「自分を信じきれなかった」結果なんだね。
直前まで綺麗に跳べていたのに。

後は無事にプログラムをこなしてくれることを祈ろう。

鉄板の3Aに狂いが出たのはザヤるのを恐れたからなのか、本当にパンクしただけなのか、本人に聞かないと分からない。
点数的を確保するなのに、どっちがよかったんだろうね。
4Tが想定外の3Tになってしまい、3A-3Tを飛んでしまったのでとアクセルか、ルッツの2本目を諦めなきゃいけなかった。
3回転の同じジャンプは2種類までしか跳べない。3Tでそれを使いきってしまった。
滑りながら構成変更を必死で考えただろう。
1点でも多く積み上げるためにはどうすればよいかと。
理系能の計算はできるタイプだもんね。

正解は分からない。
2A-1Lo-3S 、3Lz か、3A-1Lo-3S、2Aのどちらかだったんだろうね。
コンボ全体やジャンプそのものの配点を損なうことなく、跳びきった判断は凄かったと思う。

それでも普段の彼からしたら、その実行力が確実に落ちていることを感じる試合だった。
練習不足か、体力不足か、その両方か。

滑り終わった時、求め続けたファイナルへの切符が遠のいたことを感じただろう。
すさまじい思いをして、滑りきった中国杯を無駄にしてしまったと思ったかもしれない。
そうやってNHK杯のゆづ自身の闘いは幕を閉じたのだ。

満足のできない結果。
存在したのはNHK杯で両方のプログラムを滑りきった、という事実だった。
それがとても大きなことで、それをやりこなしたことで、羽生結弦劇場は、幕を閉じずに済んだ。

素晴らしいパフォーマンスだった村上選手、プログラムを何とかまとめた無良選手。
そして、遅咲きとも思えるヴォロノフ選手が表彰台に立つことになり、順位はひとつ上げて4位。
この時点でジェイソンを抜いて6番目でグランプリ・ファイナルに行くことが決まる。

本当にギリギリのラインで目標をクリアしたのだった。

本当に、本当に、私は複雑な気持ちだった。
ゆづのファイナルに行きたいという気持ちが叶ってくれたら、と思う反面、
ファイナルにいけなければ、全日本まで余裕を持って調整できるのに、という気持ち。
これは今も自分では折り合いがついていない。
(いいんだよ、私の気持ちなんてどうだってw)

彼はファイナルへの切符を手に入れた。
これを引き寄せたのはNHK杯の彼ではなく、上海での気迫とチャレンジにスケートの神様がくれたおまけなんじゃないか、とふと感じた。
このポイントでグランプリファイナルに出場できるのは2009年以来らしい。
彼を「何か持っている」と捉えることもできるし、「何かを成し遂げる人」だからこそ、
困難かもしれない道を選ばされていると捉えることもできる。

敢えて厳しい道を歩いたことで得たものもたくさんあるだろう。
そして、犠牲にしたものも。
それが羽生結弦という男が選んだスケート人生なのだろう。

男子の表彰式前に、キスクラで表彰台に村上くん、無良くんがインタビューを受けている時に、出てきたゆづ。
ヴォロノフと何か話し込んだり、メンバーを祝福したり。

自分に対しては、厳しい言葉でインタビューに答えていた。
怪我を言い訳はしなかったね。
実力不足と言い切った。

それを受け入れるのはとても勇気がいることだと思う。
言葉にして、表出化することで、自分に言い聞かせようとしているのか、とも感じていた。

もしかしたら、痛みはあったのかもしれない。
それが激痛だったのかどうかは本人しか分からない。
ゆづ自身も言っていたように、それでも中国では回りきれたのだから、痛みは理由ではない、と。
私もそう感じていた。

NHK杯のSP/FSを通して、彼らしいパフォーマンスではなかったと思う。
ジャンプの成否ではなく、プログラムを通して、羽生結弦らしい「ドヤ感」のカケラもそこには見られなかった。
何かに怯え、何かに囚われているようにすら見えた。
彼はそれを自分への「不信」と表現していたよね。

あの広いリンクに立ち、やるべきことをやり切るためには自分を信じなければ難しい。
彼はそれを痛感したのだろうか?

そんな状況でも彼は一歩も引こうとしていない。
「チャレンジャー」としてトップを狙いに行くと。
そんな心境まで回復できたことがよかったな、と思える。
後は自信をつけるための練習を積み重ねるしかないのだろうし。

ゆづは表彰台に上がる選手をひとりひとり祝福しながら、見送り、国旗が掲揚されるなか、君が代を口ずさみ、村上くん、無良くん、ヴォロノフが観客に祝福をされているのを後に、ひっそりとひとりバックヤードに消えていった。
自分のいない表彰台。
自分ではない日本選手が掲げた日本国旗に君が代
そこに立って祝福することは苦しく辛いことだろう。

それを目に焼き付けようとしている彼の凛とした姿に私は涙した。
私を泣かせたのはファントムではなかった。
彼を応援したいと思える所以はこういう彼の姿にもあるのかもしれない。

涙はときに心の奥にある昇華できない思いを流し出す作用があるという。
私も彼と同じように涙に浄化され次を見据えていこうと思う。

GPFはスペイン。
リンクメイトのハビエルの国。
どんな気持ちでそこに向かうのだろう。

PJのデスノートからゆづの名前は消えたらしいので、これはチャンスかもしれないね。
母国でハビと優勝を争うゆづを見たい気持ちで今はいっぱいです。